顎関節痛、顎関節雑音(注1)ならびに開口制限(注2)などのいずれかの症状を示し、
しかも明らかな炎症症状を欠く複雑な症候群を一般に顎関節症と呼びます。
その原因には顎関節部の外来性外傷あるいは咬合の異常が主なものと考えられ
ますが、この他にも関節リュウマチ、関節頭亜脱臼ないし過剰運動症などの部分現
象であることも稀ではありません。さらに現在では日常生活に起因するストレス、心
理的要因も複雑にこの病気の発症に影響を及ぼしていると考えられています。
私たちがこの疾患の治療に関与できるのは、咬合に主な原因があると診断される
症例です。
人間の咀嚼運動は、上下の咬み合わせ、顎を動かす筋肉、それに関節の動きがう
まく強調して行われます。そのためには上下の咬合がバランスが取れていることが
大切です。そもそも立体の運動は三点において決定されるものですから、下顎運動
についても同様なことが言えるはずです。顎を左右に滑走させる側方運動は、左右
の関節の二点に作業側歯牙上下接触点(注3)を合わせた三点によって決定されま
す。その際咀嚼筋(注4)は平衡を保ちながら働いていると考えられます。この状態
で側方運動時、平衡側歯牙(注5)の接触滑走(注6)が加わると下顎運動が四点で
行われるようになるため、いずれかの一点で非生理的な動きをする可能性が出て
きます。前方運動時に前歯部の他に臼歯部の接触滑走が加わると、この運動も四
点で行われることになるので同様な結果となります。このような非生理的運動の可
能性の存在が顎関節症の発現と深い関係があると考えられます。過蓋咬合(注7)
では前方および側方への滑走運動時切歯要素が強すぎるために関節頭の非生理
的運動を残すと言えます。またその他にも、急激な上下のかみ合わせの高さの変
化もこの疾患の発症に密接な関係があります。
咬合、顎関節、それらを結び付けている筋、およびその運動を支配する神経、こ
れらは互いに有機的に結ばれており、これらのいずれかが平衡を崩した場合に顎
関節に異常が起こると推定されます。同じような異常な咬合を有していても、何ら
顎関節に異常を訴えることの無い方もいますが、これは関節の強弱に個人差が
あるためと考えられています。
当院ではこれらの様々なことを考慮して、来院された患者さんに最適と考えられ
る咬合の再構築の治療を行っています。
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